COIL GUN


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1.COIL GUNとは?

 コイル(電磁石)の力で磁性体(主に鉄釘)を射出する装置です。今回製作したものは、光センサを用いて2回連続で加速するタイプです。
 製作時は手探り状態だったため、「部品を壊さない」設計しかしていません。威力や効率向上については他のサイトで研究されていますのでそちらを参照してください。


2.原理

 図1に製作した装置の概念図を示します。

図1.概念図

 以下に要素の説明をします。
①鉄釘 弾です。
②加速用コイル
③スイッチ 実際にはトライアック(電気を流すとスイッチONしてくれる部品)を使います。(説明は後述)
④電解コンデンサ 電気を溜める部品です。 高電圧をかけるとより多くの電気が貯まります。
⑤赤外線ダイオード 赤外線を発するLEDです。光センサの一要素
⑥フォトトランジスタ 特定波長(今回は赤外線)の光を受けると電気を流し、光がないと電気を止めます。
⑦フォトトランジスタの出力を反転します。つまり、⑥と⑦を組み合わせて光があるとき電気を止め、光がないとき電気を流す働きをします。これによって、釘が光センサ部分を塞いだ瞬間に2つ目のコイルのスイッチがONになります。


3.回路図

 図2に全体の回路図を示します。昇圧回路の詳細は後述します。

図2.全体回路図

 回路図を要素ごとに簡単に解説します。まず、図3にスイッチ部分を示します。トライアックはBTA41を用いました。
トグルスイッチ(SW2)をONにすると①(赤線)の電流が流れます。これをゲート電流といいます。この電流の値がある一定値(今回は50mA)を超えると、②(緑色)の電流を流せるようになります。つまり、スイッチをONにしたのと同じ効果が得られます。ゲート電流を止めた状態で②の電流がゼロになると②の電流を流せなくなります。

 抵抗(R2)の決め方について述べます。データシートを見るとBTA41のゲート電流は50mA以上8A以下でなければなりません。また、ゲート電圧は最大で1.3Vです。つまり、抵抗にかかる電圧は(電池の電圧-1.3)Vです。よって、電池1本では心もとないので2本の3Vとしました。あとは、50mA以上流れればいいので、(3-1.3)/(0.05)=34Ωより小さい抵抗を用いればOKです。
 ここで、抵抗値には、その許容誤差に応じてE系列というものが定められています。誤差±5%ならE24系列です。これを見ると、34Ωは存在せず、一番近い値が33Ωです。よって、33Ωが適切な抵抗値となります。

 回路図を見ると51Ωとなっていますが、これは手元にある51Ω抵抗で試してみると偶然動作したためです。あくまでゲート電圧は最大値なので、手元の抵抗で試して動けばそれでOKです。手元に抵抗がなければ、33Ω抵抗を購入したほうが無難です。

図3.スイッチ部分

 図4に光センサ部分を示します。 フォトトランジスタはL-51ROPT1D1を、トランジスタは2SD2012を用いました。後者は今考えると性能過剰です。これから作る際は入手性,はんだ付けのしやすさ,汎用性を考慮すれば2SC1815-Yあたりがいいでしょう。(今回の用途ではこれでも性能過剰ですが;)
 弾がないときは赤外線LED(D1)の発する光がフォトトランジスタ(Q1)にあたり、①(赤色)の電流が流れます。弾がこの光を遮るとフォトトランジスタは①の電流を流せなくなりますから、抵抗(R3)を通った電流は行き場を失って②(緑色)のように流れます。すると、トランジスタ(Q2)はトライアックと同様に③(青色)の電流を流せるようになります。そして、これが2つ目のトライアック(TRAIAC2)のゲートに流れます。

 抵抗の決め方について述べますが、R4とR5は不要です。これは設計当時データシートの読み方がわからなかったために実験的に求めた抵抗値です。実際は②の電流を調節するだけでOKですので、R3についてのみ説明します。また、R3を求める際もR4とR5は存在しないものとして説明します。

 抵抗(R3)の決め方について述べます。まず、データシートを見るとフォトトランジスタに光が当たっているときに流せる電流は2mAです。つまり、抵抗(R3)に流れる電流が2mAを超えると、光が当たっていても②の電流が流れてしまいます。
 また、コレクタ-エミッタ間電圧は0.4Vです。つまり、抵抗(R3)にかかる電圧は(電池の電圧-0.4)Vです。そしてスイッチ部分の電池と光センサ部分の電池を別にするのは面倒なので、ここも電池は3Vとします。よって、抵抗(R3)にかかる電圧は2.6Vです。よって、抵抗値は1.3kΩ以上ならOKです。
 ここで、トランジスタ(Q2)のデータシートを見ると、室温でコレクタ電流が100mA以下であれば直流電流増幅率は300前後です。つまり、ベース電流はIc/hfe≒Ie/hfe=50/300=0.17mA以上あればトライアックのゲート電流50mAを流せます。つまり、抵抗値は1.3kΩ以上17.6kΩ以下であればOKとわかります。
 また、電池の電圧はある程度誤差があるため3Vより少し高くても正常動作するように1.3kΩよりも高い抵抗を選ぶ必要があります。そして、汎用性も考慮して2kΩに設定しました。

図4.光センサ部分

 図5に加速コイル部分を示します。ダイオードはER504を用いました。コイル(L1)の抵抗3.0Ω,インダクタンス0.9mHで、図5にはありませんがコイル(L2)の抵抗は2.2Ω,インダクタンス0.6mHです。
 トグルスイッチ(SW3)は備え付けのコイル(L1)を用いるか、外付けのコイル(L0)を用いるかの選択スイッチです。
 ダイオードはフリーホイールダイオードと呼ばれる回路保護用のダイオードです。

図5.加速コイル部分

 図6に昇圧回路を示します。NE555というタイマICを用いた昇圧チョッパ回路です。回路の大まかな動作については他のサイトでうまく説明されていますが充電電圧の時間に関する厳密解を求めるのは難しいため、抵抗は可変抵抗として適宜調節するようにしてあります。また、電気回路のシミュレーションは手計算ではなくLTSpiceで行います。大体30秒で充電完了します。

図6.昇圧回路

4.コンデンサ放電過程(LCR回路解析)

 回路図の説明時にはトライアックの絶対最大定格(絶対に超えてはいけない電流や電圧などの大きさ)や電解コンデンサに関する注意点に触れていないので、ここで説明します。
 まず、トライアックの絶対最大定格についてデータシートを見るとたくさんの物理量がかかれています。トライアックを交流制御に使う場合はおそらくすべて考慮する必要がありますが、コイルガンのように一瞬だけ電流を流す用途の場合は、サージ電流の最大値とdI/dtを考慮すればおおよそ大丈夫と思われます。(私が設計したときもこれだけを考慮しました。)
 また、電解コンデンサは電極に正負があるため逆充電されないようにしなくてはなりません。
 以上のことから、コンデンサの放電過程について計算する必要があります。そこで、コンデンサの充電電圧と回路に流れる電流の時間に関する方程式を示します。グラフについては電圧のみを示します。具体的な解法については、「定数係数の二階線形斉次微分方程式」で調べていただければわかりやすい説明が見つかると思います。気が向いたらブログ側にも載せるかもしれません。


 まず、キルヒホフの法則・コンデンサに充電された電荷と電流の関係・コンデンサに充電された電荷と電圧の関係を示します。Lはインダクタンス・Cは静電容量・Rは抵抗・Vは充電電圧・Iはコンデンサの正極から負極の方向に流れる電流です。

数式1
 これをまとめて、初期条件と合わせると次の微分方程式がたちます。微分方程式とは、ある関数(今回はQ)の微分が含まれている方程式です。ある関数の形はわからないけれども微分したらどうなるかわかっているとき、まず微分方程式を立て、それを解くことでその関数の形を導きます。
数式2
 これを解くと条件ごとに3つの解が得られます。解をすでに与えられた文字だけで書くと非常に煩雑になるため、以下の文字a,b,ωを設定します。また、それぞれの解の中で積分定数にあたる文字をA,Bとして別途記述します。 ここで、a,b,ωは全て正の値です。
数式3
 以下に場合分けの条件と解を記述します。また、eを自然対数の底とします。(1)の時を過減衰、(2)の時を臨界減衰、(3)の時を減衰振動といいます。
 また、それぞれの場合について電圧(V)-時間(s)グラフの一例を示します。グラフではすべてVo=10(V),Io=0(A)とします。
(1) R^{2}C-4L>0 のとき
(1) R^{2}C-4L>0 のときの解
L=1(H),C=2(F),R=2(Ω)

(2) R^{2}C-4L=0 のとき
(2) R^{2}C-4L=0 のときの解
L=1(H),C=1(F),R=2(Ω)

(3) R^{2}C-4L<0 のとき
(3) R^{2}C-4L<0 のときの解
L=10(H),C=1(F),R=1(Ω)

 グラフを見ると、過減衰と臨界減衰はあまり違いがありませんが、臨界減衰のほうが若干早く減衰しています。減衰振動のグラフは、時間とともに振幅が減少しながら振動しています。つまり、コンデンサが逆充電されて危ない状態です。毎回この計算をするのはしんどいので、PC上でシミュレーションする方法を次に紹介します。


5.LTSpiceでのシミュレーション

 昇圧チョッパ回路のシミュレーションとコンデンサの放電過程のシミュレーションを示します。
 図7に昇圧チョッパ回路のシミュレーション結果を、図8にコンデンサ放電のシミュレーション結果を示します。昇圧チョッパの場合に必要なNE555はLTspiceのexamplesファイル⇒Educationalファイル⇒NE555.asc から利用できます。コンデンサ放電シミュレーションの際に必要なコンデンサの初期充電電圧は、LTspice画面右上の「.op」ボタンを押して、「.IC V(ノード番号)=(数字)V」と打ち込んで回路図部分で一回クリックして文字を張り付けると設定できます。 電流は向きが右向き性のために、負の値で出てきています。

図7.昇圧回路シミュレーション 図8.コンデンサ放電シミュレーション

6.LCRシミュレータ

 コンデンサ放電のLCRシミュレータをC で制作したものを公開します。 かなり拙いものですが、「計算なんてやろうと思えば他の方法でできるけれど今すぐにはちょっと面倒」を解消できれば幸いです。動作確認はwindows8.1のみで行っています。
 使い方やプログラムコードについてはブログで公開します。
ここをクリックでダウンロード


7.製作例

 図9.図10にコイルガンの制作例と昇圧回路の制作例を示します。写真のコイルガンは昇圧回路を作る前の物なので昇圧部分がフィルム付きカメラのものになっています。

図9.コイルガン 図10.昇圧回路

8.製作例動画

 実際に作ったコイルガンの試射動画です。画像の上で右クリックして再生オプションを探してください。


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